令和6年3月作成
令和8年4月改定
1. 身体拘束の基本的な考え方
身体拘束は患者の権利である自由を制限するのみならず、身体的にも精神的にも弊害を伴うため、身体拘束を行わないことが原則である。当院では、患者一人一人の尊厳を尊重し、安心・安全な医療が確保されるように、身体的・精神的な影響を招く恐れのある身体拘束は、緊急やむを得ない場合を除き、原則として実施しない医療・看護の提供に努める。
2. 身体拘束の定義
「抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限」と定義する。
3. 緊急やむを得ず身体拘束を行う場合の要件
当院では身体拘束を行わない事が原則である。ただし、次の3要件を全て満たす場合に限り、最小限の期間、適切な方法で身体拘束を行う。
*切迫性:患者本人または他の患者の生命や身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
*非代替性:身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替手段がないこと
*一時性:必要最低限の期間であること
4. 身体拘束の適応
(1) 治療上の必要な体位を守れず、医療機器や酸素、点滴ライン等を抜去してしまう恐れのある場合
(2) 認知症や不穏状態によりベッドや車椅子から転倒・転落の恐れのある場合や点滴を抜いてしまう恐れがあると判断される場合
(3) 検査・治療で抑制が必要な場合
(4) 行動障害が頻回かつ切迫している場合
(5) 不穏状態が強度で治療の協力が得られない場合
(6) その他の危険行動(離院・離棟等の危険性がある場合)
5. 緊急やむを得ず身体拘束・行動制限を行う場合
1. 身体的障害
1)関節拘縮、筋力低下、四肢の廃用症候群といった身体機能の低下や圧迫部位の褥瘡発生等の外的弊害
2)食欲低下、心肺機能や感染症への抵抗力の低下等の内的弊害
3)拘束からのがれるために転倒や転落事故、窒息等の大事故を発生させる危険性
2. 精神的障害
1)本人は縛られている理由も分からず、人間としての尊厳を侵害
2)不安、怒り、屈辱、あきらめる等の精神的苦痛、認知症の進行やせん妄の頻発
3)拘束されている本人の姿を見た家族に与える精神的苦痛、混乱、罪悪感や後悔
3. 社会的障害
1) 職員の士気の低下
2) 病院に対する社会的な不信・偏見を引き起こす
3) 身体拘束による本人の心身機能低下は、その人のQOLを低下させるだけでなく、更なる医療的処置を生じさせ、経済的にも影響を及ぼす
6. 身体拘束最小化のための体制
以下の取り組みを継続的に実施し、身体拘束の適正化のための体制を維持・強化する
1. 身体拘束最少化委員会の設置及び開催
毎週土曜日の13時より開催
2. 委員会の構成とその役割
委員長:病院長
委員:看護部長・2 階看護師長・3 階看護師長・医療安全委員・看護師・看護補助者・理学療法士
(1) 身体拘束最少化における指針の等の見直し
(3) 身体拘束最少化に関する職員教育と情報共有
(2) 家族との連携調整
7. 身体拘束最少化のための職員研修
1) 全職員対象とした身体拘束に関する教育研修を定期開催する
(年2回以上:新入職員者においては必ず実施する)
2) 研修にあたっては、実施日・実施場所・方法・内容等を記載した記録を作成する
8. 身体拘束を行わずにケアを行うために
身体拘束をせずにケアを行うためには身体拘束を行わざるを得なくなる原因を特定し、その原因を除去するためにケアを見直すことが求められている。そのための〈3つの原則〉 に取り組む。
1. 身体拘束を誘発する原因の特定と除去
行動パターンには理由がありケアする側の関わり方や環境に問題がないか原因を探りケアすることが必要である。
2. 5つの基本的ケアの徹底
(1) 起きる
人間は座っているとき重力が上からかかることにより覚醒する。目が開き、耳が聞こえ自分の周囲で起こっていることが分かるようになる。これは仰向けで臥床し天井を見ていたのでは分からない。起きるのを助けることは人間らしさを追求する第一歩である。
(2) 食べる
人にとって食べることは楽しみや生きがいであり、脱水予防、感染予防にもなり点滴や経管栄養が不要になる。
(3) 排泄する
なるべくトイレで排泄してもらうことを基本に考える。 おむつに排泄物があると気持ち悪くおむついじりなどの行為につながることになる。
(4) 清潔にする
お風呂に入ることが基本である。 皮膚が不潔なことが、かゆみの原因にな り、そのために大声をだしたり、夜眠れずに、せん妄になったりすることになる。 皮膚をきれいにすることで本人も快適になりケアもしやすくなる。
(5) 活動する
その人の状態や生活歴にあった良い刺激を提供することが重要である。その人らしさを追求するうえで心地よい刺激が必要である。
3. よりよいケアの実施
身体拘束廃止を実現していく取り組みは、院内におけるケア全体の向上や生活環境の改善のきっかけとなりうる。 「身体拘束廃止」を最終ゴールとせず、身体拘束を廃止していく過程で提起された様々な課題を真摯に受けとめ、よりよいケアの実現に取り組んでいくことが期待される。
9. 患者本人及び家族への説明と同意
(1) 身体拘束を実施する時は、医師が患者または家族に必要性を説明し、文章で同意を得ることが原則である。 緊急入院や認知症でのせん妄等、身体拘束が必要になることが予測される場合においては、患者・家族に事前に説明し、同意を得ておいてもよい。
説明内容:1 身体拘束を必要とする理由
2 身体拘束の具体的な方法
3 身体拘束を行う時間・期間
4 身体拘束による合併症
(2) 緊急に身体拘束等の説明の必要性が生じた場合は電話で家族等へ説明し、承諾を得る。 承諾を得る際、承諾者の氏名・続柄をカルテに記載しておく。後日説明を行い、同意書にサインをもらう。
(3) 患者・家族等の同意が得られない場合は、身体拘束をしないことで起こり得る不利益や危険性を説明し、診療録・看護記録に記載する。
(4) 緊急やむを得ない期間が長期(医師の説明や予測した期限を超える場合)に及ぶ場合は、再度患者・家族等の同意を得なければならない。同意期間は、1ヶ月とし、期間が終了した際は再度同意書の記載が必要となる。
10. 身体拘束開始基準
1. 身体拘束等の開始時の手順
(1) 医師、看護師をはじめとする多職種で身体拘束などの必要性をアセスメントする
(2) 身体拘束などが必要と判断されれば、医師が指示を記載する
(3) 本人または家族へ十分なインフォームドコンセントを行い「抑制及びこれに準ずる行為に対する同意書」 「ウェブカメラ(見守りカメラ) 設置に関する同意書」にて同意を得る
*緊急に身体拘束等の必要性が生じた場合は電話にて説明し承諾を得る
承諾を得る際、承諾者の氏名・続柄をカルテに記載しておく
後日、説明を行い同意を得る
(4) 同意後に身体拘束を開始し、エクセルチャートの入力を行い看護計画を立案する 緊急で開始した際は、後日説明を行う
2. 身体拘束実施中の留意事項
身体拘束実施中は、「患者の安全の確保」への責任義務および「身体拘束等による事故防止」への注意義務を遂行し、十分な観察とケアを行う。 特に抑制帯による上肢・下肢の抑制、ミトン使用中は以下の点を留意する。
1) 抑制方法
(1) 抑制部位に応じた抑制用具を選択し必要部位にしっかり装着する
(2) 抑制具装着に緊急かつ安全性を要する場合は2人以上の看護師が協力して行う
2) 観察
(1) 抑制実施中は患者の状況に応じ適宜観察を行う。 3時間毎にエクセルチャートの観察項目に沿い観察を行いチェックする
(2) 抑制具装着に緊急かつ安全性を要する場合は2人以上の看護師が協力して行う
・抑制が確実に行えているか
・抑制部位及び周辺の循環状態、神経障害の有無、皮膚障害の有無
・患者の精神状態、体動状態
*同一体位の持続による局所の圧迫と循環障害によって関節の機能障害が現れ屈曲しにくくなる。 また圧迫部位に発赤、摩擦による皮膚損傷が発生しやすい。 上肢においては橈骨神経麻痺、尺骨神経麻痺に留意する。
3. 看護
(1) 抑制の部位や時間は最小限にする
(2) 抑制中は2~3時間毎に抑制具を除去し観察と記録を行う
(3) 体位変換、体位調整を行う
(4) 四肢の自動、他動運動を行う
(5) 家族の面会時など可能な限り身体拘束をしなくてよい方策や早期に解除できる方策を検討し恒常化しないようにする
(6) 清潔保持を心がけミトン使用時などは適宜交換し、入浴できない時は手浴で対応する
11. 体拘束の評価
1) 看護師は毎日経時記録で身体拘束の必要性をアセスメントし観察・記録する。 週1回(土曜日)のカンファレンスで認知・認識スコアと行動・体動スコアを用いて身体拘束の中止が可能か検討を行う。看護計画の評価を経時記録で行いと次回評価日の入力、エクセルチャートの入力を行う。
2) 医師は身体拘束の適応と継続について週1回(土曜日)のカンファレンスで評価し、その結果をカルテに記載する。身体拘束の必要がなくなった場合や退院された場合は、評価の結果をカルテに記載し身体拘束を中止・解除する。
12. 身体拘束の解除基準
1) 身体拘束に必要な3要件を満たさない場合
2) 身体拘束の影響から身体的侵襲が出現した場合
13. 身体拘束等に関する記録
1) 医師は身体拘束を開始する前にカルテ指示簿に指示を記載する。
2) 身体拘束の必要性及び実施中のアセスメント、評価は経時記録とエクセルチャートの評価表を用いて記載する。
3) 身体拘束を実施した際は短時間であっても必ず経時記録に実施方法を記載する。
4) 身体拘束実施中の観察は患者の状況に応じ適宜、観察を実施し身体拘束チェックシートへ記載する。
14. 身体拘束の「同意書」記載、管理方法
1) 患者の安全を守るために身体拘束等以外の方法をとっているが、身体拘束等をせざるを得ない状態であることを理解していただくとともに家族の協力も依頼する。
2) 3要件を満たした場合に限り身体拘束を実施することを説明する 。
15. 当該指針の閲覧に関する基本方針
本指針は、当院マニュアルに綴り職員が閲覧可能とするほか、ホームページに掲載し、患者さんおよびご家族が閲覧できるように配慮する。
杉循環器科内科病院 身体拘束実施率推移
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R8.1 |
R8.2 |
R8.3 |
R8.4 |
R8.1 |
R8.5 |
R8.6 |
R8.7 |
R8.8 |
R8.9 |
R8.10 |
R8.11 |
R8.12 |
院内 全体 |
0.01% |
4.38% |
2.25% |
1.72% |
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2階 病棟 |
1.69% |
6.34% |
3.13% |
3.07% |
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3階 病棟 |
0.00% |
2.50% |
1.31% |
0.00% |
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